ツールに求める役割を先に決める

業務委託で時間単価の契約をしている場合、稼働記録は請求額の根拠そのものです。クライアントに管理されるための記録ではなく、自分が「何に何時間使ったか」を説明できるように残す記録だと考えると、必要な機能が絞り込めます。

月末に必要になるのは、クライアントごとの合計時間、それに単価を掛けた金額、そして日ごとの内訳です。ツール選びでは、この3つが毎月どれだけ少ない手間で揃うかを基準にしてください。記録から請求額を出す流れの全体像は時間単価の請求書の作り方で確認できます。

選ぶときの8つの基準

1. 記録の方法(タイマーと手入力)

作業の開始と停止をボタンで記録するタイマー式は、時刻を書き写す手間がなく、記録漏れも減ります。一方で、押し忘れは必ず起こります。後から手入力で追加できるか、開始・終了時刻を修正できるかは必ず確かめてください。タイマーで記録したのか手入力したのかが区別されて残るツールなら、後で記録を見直すときにも根拠を説明しやすくなります。

2. クライアントの分け方

複数の取引先を持つなら、記録のたびにクライアントを選べることが前提です。単価や税の扱いがクライアントごとに違う場合は、それをクライアント側の設定として持てるかも見ておきます。プロジェクトやタスクを細かく分ける機能は、請求に使わないなら入力の手間が増えるだけです。

3. 月次の集計

月をまたぐ作業や深夜の作業がどの日に計上されるか、日本時間で日付が区切られるかを確認します。海外製のツールでは、表示のタイムゾーン設定が合っていないと日付がずれることがあります。

4. 出力形式(CSV・PDF)

CSVはExcelで加工でき、PDFはそのまま提出できます。CSVをExcelで開いたときに日本語が文字化けしないか、日付・開始・終了・作業時間・作業内容の列が揃っているかを試用期間中に確かめておくと安心です。

5. 請求書と稼働明細を作れるか

記録だけのツールなら、請求書は別のソフトやテンプレートで作り、合計時間を転記することになります。転記はミスが入りやすい工程です。稼働明細に何を載せるべきかは稼働明細書の作り方にまとめています。

6. 日本の請求実務への対応

日本語で使えることに加えて、円での計算、消費税の端数処理、源泉徴収の要否をクライアントごとに切り替えられるか、適格請求書発行事業者の登録番号を請求書に載せられるかが分かれ目になります。

7. 料金

無料プランは記録だけ、出力や請求は有料という構成がよくあります。月額だけでなく、自分が実際に使う機能がどのプランに含まれるかで比べてください。

8. データの扱い

作業内容にはクライアントの案件名が含まれることがあります。データがアカウントごとに分離されているか、退会時に削除されるか、運営者と問い合わせ先が明記されているかを、利用規約とプライバシーポリシーで確認しましょう。

画面や操作を記録する機能は個人事業主には不要

時間管理ツールの中には、スクリーンショットの自動取得、キーボードやマウスの操作量の計測、閲覧サイトの記録といった機能を持つものがあります。これらは主に企業が従業員やチームの作業状況を把握するための機能です。

業務委託は、仕事の進め方や時間の使い方を受託者が自分で決めるのが基本です。厚生労働省は、契約の名称にかかわらず「業務遂行上の指揮監督の有無」や「拘束性の有無」などの実態から労働者性を判断するとしています(労働基準法における「労働者」とは)。自分の記録として使うなら、作業内容と時刻が正確に残れば十分で、画面や操作の記録は請求の根拠として必要ありません。

ツールのタイプ別比較

稼働時間管理に使われる主な4タイプ(一般的な傾向)
タイプ記録のしやすさ請求書・稼働明細向いている人
Excel・スプレッドシート時刻を手で入力。自由度は高い自作のテンプレートで作成クライアントが少なく、数式に慣れている人
汎用タイムトラッカータイマーで手軽。機能が豊富記録のみが多く、請求は別ソフトチームや多数の案件を細かく分析したい人
請求書作成ソフト時間の記録機能は限定的なことが多い請求書は得意。明細は別途固定報酬の案件が中心の人
記録〜請求一体型記録とクライアント設定がつながる記録から両方を作成時間単価で毎月請求する人
稼働時間管理に使われる主な4タイプ(一般的な傾向)

Excelで始める場合は、時刻の計算式を正しく組めば十分に運用できます。具体的な数式はExcelで稼働時間を集計する方法を参照してください。

一体型の例として、Hacaruは作業内容を入力して開始・停止を押すだけの記録から、クライアント別・月別の請求書(PDF)と稼働明細(PDF・CSV)を作るWebアプリです。消費税と源泉徴収の計算に対応する一方、メール送信、入金管理、精算幅の計算、会計処理、承認フローの機能はありません。

月末にツールから出てほしい数字(架空の例:佐藤さん、2026年10月)
クライアント:株式会社サンプル(時間単価 5,000円・税抜)
稼働時間合計:82時間30分
報酬:5,000円 × 82.5時間 = 412,500円
消費税(10%):41,250円
請求額:453,750円(源泉徴収なし)

選ぶ前のチェックリスト

  • 開始・停止の記録と、押し忘れの手入力・修正ができる
  • 記録ごとにクライアントを選べ、単価と税の扱いをクライアント単位で設定できる
  • 日本時間で日別・月別に集計され、日付をまたぐ作業の扱いが明確
  • CSVがExcelで文字化けせずに開ける
  • 請求書と稼働明細を作れる、または必要な数字を転記なしで取り出せる
  • 消費税・源泉徴収・登録番号に対応している
  • 使う機能が含まれるプランの料金を把握した
  • データの分離・削除と運営者の連絡先を確認した
  • スクリーンショットや操作記録など、不要な機能を前提にしていない

ポイント

試用期間があるなら、実際に1か月分を記録し、月末に請求書と明細を作るところまで試すのが一番確実な比較方法です。